まずは床暖房についてです。
近年の床暖房の普及には著しいものがあり、私が手がけている住宅ではほぼ全ての家で床暖房を設置しています。
一般には住宅着工物件の約4割が床暖房を採用しているとも言われています。
(統計上、普及率としてはまだ日本国内の住戸の10%に満たないようです)
(なお北海道と東京が最も普及をしていて約20%です)
床暖房の優れた点は、「温湿度環境」と「安全性」にありますが、まずはその概要について以下に記します。
温湿度環境:
空気を暖めるのではなく、床面を暖めるので人が不快に感じるコールドドラフトを発生させず、「頭寒足熱」の環境をつくります。
また、空気を乾燥させず、結露の発生を押さえることができます。
安全性:
石油ストーブのように室内で火を使わないので火災などに対して安全です。
また空気を汚したり、乾燥させないので健康的です。
気になるコストについては今日の普及のおかげでイニシャルコストもかなり下がってきています。
(もちろん他の暖房に比べると決して安いものではありませんが)
ガス式であれば、他の暖房方式に比べ、ランニングコストも比較的少ないのも大きな特徴です。
上記のようにいいことずくめの床暖房ですが、注意が必要な点もありますので以下に問題点や対策、お勧めする床暖房システム等について記させて頂きました。
[フローリング材]
床を暖めますので、基本的には、床暖房用のフローリング材とする必要があります。
これは、床材の温湿度変化による「そり」や「ふくれ」、「隙間」が生じるのを防ぐためです。
しかし、このため床暖房用のフローリング材のほとんどは合板の上に薄くスライスした木のシートを貼り付けたいわゆる複合フローリング材というものとなります。
しかしこれらの床材は長年使っていくと、表層がはがれたり、下地が見えたりすることも起こることがありますので、耐久性や美観保持の面でしっかりとした性能の床材を選定する必要があるといえるものです。
コスト面からは上記のようなフローリング材が主流ですが、耐久性等の点では私は採用できないものと考えています。
仮に床暖房がなくても、できれば床の木材はシックハウスの観点からも無垢材、またはそれに準ずるものとしたいものです。
そのようなことから私の事務所では、床暖房であっても無垢のフローリング材、或いは表面が2ミリ以上の厚さのフローリング材を日頃おすすめしています。
特に小さなお子さんがおられるようなハードユースを考慮する必要がある家では、その違いは明らかです。
少しコストをかければ、将来、床の貼り替えが不要になりますので、長期的視点からはムク材の方がかえってローコストの家になるはずです。
[床暖房システム]
スポット的な暖房ではなく、部屋全体の暖房として床暖房を採用するのであれば、電気式ではなくガス温水式となるでしょう。
このとき、是非注意したいのが以下の点です。
1.温水の通る配管は、できるだけ太いもの:将来の目詰まり防止のため
2.温水の通る配管は、ジョイントのないもの:将来の目詰まり防止と漏水対策
3.温水が自動補給されるもの
3.については近年常識化しつつあるようですが、特に2.には気をつけたいものです。
配管のジョイントが室内にあると、そこに目づまりや配管のはずれといった危険が生じ、床暖房の機能に支障をきたすばかりでなく、漏水の原因ともなります。
ここで、私が通常採用している床暖房システムについて記させて頂きます。
暖房効率、耐久性、フローリング材への負荷軽減といった観点からお勧めできるものです。
その仕様は温水配管を通す床暖パネルの上にアルミパネルを敷き込むことにより、通常パイプ回りだけが暖まる床暖房(線的な暖房)に対して、床面を均一に暖める床暖房(面的な暖房)としたものです。
これにより、床の仕上げ材がフローリングであっても遠赤外線効果のある暖房となる為、低温運転で充分に床暖房効果が得られると同時に、低温運転の為床材への負担も軽減されるものです。
もちろん、温水配管の太さは一般的に使用されている床暖房材よりも太く、途中でのジョイントも全くないものです。
ここ5年程前より私の事務所では定番の床暖房仕様としています。
[やけど]
床が暖かいからといって、素肌でその上に寝ることは避けるべきものです。
長時間素肌が床についたままでいると、時によって低温やけどになってしまうことがあるようです。
(その点でも前項の低温方式は安全性は高いと考えています)