子供部屋の位置 

~ひきこもりや非行防止の観点から~

近年社会問題として取り上げられることが多い子供のひきこもり、最近はあまり聞くことが少なくなってきましたが子供の非行も含め、親世代としては常に気になるものだと思います。
(私自身は子育ては卒業が近づきつつありますが...)

家の設計に関わる者として、また子供を育てる親としては、子供をどのような環境で育てるべきかというテーマは、住宅の設計をするようになってから常に気にしてきたテーマのひとつです。
このホームページの立ち上げ時から記していた事ですが、私は子供のひきこもりや非行といった要因のひとつに、今日の住まいの「間取り」や「家の中における位置や関係性」があると考えています。
(あくまで要因のひとつとしての個人的な見解です)

近年の多くの住宅やマンション、アパートや社宅などにおける子供部屋は、玄関に隣接したような「子供は勝手に出入りしてもいいよ」と言っているような位置にあると思います。
子供部屋としてもともと想定されていなくても、このような場所の部屋を子供室としている、或いはそのようにせざるを得ないというのが現実かとも思います。
これは1階に玄関があり、玄関脇に階段があって、2階にあがるとすぐに子供部屋があるといった、よくある2階建ての住宅でも同様です。

昔ながらの社会との接点でもある「庭」であったり、日中には開放しておけるような「窓」を失いつつある今日の住環境の中では、「玄関」が住まいと社会との間の接点です。
その接点に一番近いのが、親ではなく子供であるというのは、何ともおかしなものに思えてなりません。
つまり、今日の多くの住まいにおける子供の居場所は「親に守られた場所」ではないと思われるものです。

また、家の中にあっても家族の集まるダイニングであったりリビングとの関係性が薄い場所であることも多いと思います。
ドアも一般的には密閉性の高い開き戸で、小窓ひとつないケースが多いのではないでしょうか。

親の目が気になりすぎる家も問題があるでしょうが、両親や家族全員との関係であったり子供の独立性が程良く反映された位置関係や出入口をもつ家は、子供にとって、家族にとって「良い家の条件」のひとつと考えます。

また、日中に家にいる時間や部屋にいるが長いのは通常子供たちです。
親の寝室よりも客間よりも、日当たりのよい場所に部屋を設けてあげたいものだと思っています。